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トピックスー No.8

8、松井守男の新境地

 

 松井画伯と言えば、光の画家と呼ばれるフランスを代表する面相筆の洋画家。

今回は、和の空間に洋の趣を取り入れた襖絵と屏風絵を完成させた。ちょっとした新作襖のブームになっている京都での画伯の作品を見てみよう。

 

 三千院の客殿に置かれた屏風絵は、面相筆の細かい筆致で、「○」をモチーフに豊かな色使いで描いた「両界曼荼羅」。テロや東日本での大災害などの出来事に心を痛めていた画伯の、平和への祈り、等しく親和でありたいとの願いが「和=輪」となり、「曼荼羅図」として祈りの空間に置かれる。

 

 また、隣接する勝林院住職の宿舎であった宝泉院では、近年に移築された日新庵の襖絵を描いている。樹齢700年と言われる五葉松をモチーフに、大地から沸き上がるエネルギーを、抽象化された勝林院や樹木などに広げ、対極には三様の「○」を配し、祈り、平和を念じる心が天空に届き、沈みがちな仏教寺院に明るい希望の光を広げてみせた。

 

 一方、上賀茂神社の襖絵では、白地に白い絵具を使って神社を代表する二葉葵や立砂、天と地をつなぐ雷鳴や光などを描き、禊ぎ、祓いを旨とする神社の精神性を白一色で描き、「白の尊厳」と言える空間を生んだ。白以外の色を加えた途端にその色が意味を主張する。 それを画伯は意図して避けた。

 総じて、仏教寺院では祈り念ずる心や自然との調和の姿を表現し、神社ではその本質を描いてみせた。

 

 渡仏50年を来年に控えた松井画伯は、神社仏閣と言う東洋の宗教施設に、場と一体化させた宗教絵画として襖絵や屏風絵を描き、単なる装飾品や調度品とはしなかった。

 

 斬新な色使いや絵柄、構図など、自らの主張や価値観に基づく襖絵制作競演の中で、唯一自己を離れ、自己を無にしつつその場の特性を感じ、自らの身体や感性を通して襖絵や屏風絵を描いてみせた。

 

新境地誕生の瞬間である。


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