ミュージアムとの出会い その5

展示中の回転変流機(部分)  
展示中の回転変流機(部分)  

~学芸員の学び~

 

 博物館の学芸員も、他のビジネスマンの方々と同様に、専門分野の研究や業務知識を深めたり、 ヒューマン・ネットワークを広げる為の様々な会にも参加します。

今日は、そんな経験をとどめておきましょう。

 

 教育普及業務を担当していた頃の話です。

 

 私の在籍していた施設の展示業務では、年間を通した展示計画の作成と共に、学芸員自らが展示デザインや設計等も行なっていました。

 その頃、自らの業務能力向上のために、当時、流行り出していたカルチャーセンターのインテリアデザインコースに参加していた事があり、その時にお知り合いになった大手事務家具メーカーの室長の方(仮にA氏とします)からのお誘いがあり、ある経営コンサルタント会社の勉強会に参加する機会を得ました。 

 

 関西の大手・中堅企業の社長さんや部長さんクラスが集まる勉強会です。 

勿論私は、平の学芸員、会費は、年間十数万円。

当時の私の月収の数ヶ月分に相当する額です。

 

 事務局の方の計らいで、平の学芸員という事はビジネス社会で言えば平社員と同じだろうと言う事で、昼食代を含めて1回5千円の参加費で参加させて頂く事になりました。

 

 ビジネスと言う文化活動とは全く違った環境、それも、会社の経営に携わる人達はどの様な価値観を持ち、どのように物事を理解し、どう行動するのか・・・。

 

 そんな点に興味があり、あえて、別世界の人達と交流できる機会を持とうと考えたのです。

 

 昼食のあと、フリートークの型式で話し合い、その話題の中からコンサルタントの方がその日のテーマを決め、そして、経営ノウハウに繋がる話にまとめ上げると言う、誠に実践的な勉強会です。

 

ある日の勉強会での事・・・。

 

 事務家具メーカーの開発室長であるA氏が、台所用システム家具の開発話を、図面や調査結果の統計資料なども配布しながら説明されましたが、その中で私の感性に響いた言葉が「コンセプト」と言う言葉でした。

 

 概念とか、考え方、あるいは、思想と言った意味ですが、このシステム家具を開発する時に、まず、家具の「コンセプト」を会議で決定し、それに沿って設計・開発していった経緯を発表されました。

 

 勿論、その日は、台所用システム家具の「コンセプト」について、コンサルタントの先生と参加している方々とが、様々な角度から議論をしたり、自社の事例などを紹介されながら、話し合いは続きました。

 

 それまでの私は、展示や催し物の企画を進める時には、施設のテーマに関係したテーマを決め、そのテーマのサブテーマを分析し、それに沿って具体的な内容を考えると言う、所謂、カテゴリーを重視しながら企画するという方法でしたので、「コンセプト」という言葉を新鮮な響きを持って聞いていたのです。

 

 次回開催された研究会では、時代背景や人々の思考など、色々な要素を考え合わせながら、コンセプトが考えられ、それに沿ってシ家庭用ステム家具のデザインがされていました。

 

 「よし!私も何かコンセプトを作って、催し物を企画してみよう」 と言う気持ちが沸き立ちました。

 

この続きは、次回に・・・。

 

写真説明/

山陽本線の直流電化区間に送電する為、発電所から送られてきた交流の電気を直流に変換する為の「回転変流機」の一部。芦屋の変電所に設置されていたものを、保存する為に収集したもの。準鉄道記念物に指定されており、言わば、我が国近代化の産業遺産でもあります。